2006年度 第9回「モバイル・ユビキタス技術と学習環境:BEAT3年間の研究を総括する」 2006年度 第9回「モバイル・ユビキタス技術と学習環境:BEAT3年間の研究を総括する」

5.1.この3年間のまとめ

3年間前から、モバイル・ユビキタス技術を活用した研究・開発を行ってきた。しかし、ここで必ず問題となるのは「それはPCでもできるのでは?」ということである。そこで色々と試行錯誤した結果、3年目になってやっと形が見えてきたと感じている。
モバイル・ユビキタス技術を活用する最大の理由は、学習者の状況から学びの環境を構成し、「今・ここで」必要なものを提供することである。今までの教育コンテンツは「これがベストです」という形で提供され、「これでわからないならわからない方が悪い」という態度であった。それではダメで、学習者ひとりひとりの環境があり、それに合わせた学びの環境をフレキシブルに構成できるのがモバイル・ユビキタス技術だと考えている。
モバイル・ユビキタス技術というと、「いつでもどこでも学習ができる」と思われがちであるが、これは「いつでもどこでも学習しない」と同義である。そうではなくて、「いま、ここで必要なもの」を実現できるのがモバイル・ユビキタス技術である。これに気がつくのに2年か3年はかかった。

5.2.今後3年の研究トレンド

  • コンテキスト・テクノロジー
    学習者が携帯電話でのクイズに間違えたから、正解に関する情報を送るということは可能であるが、少ない情報から学習者の状況を知ることは難しい。ソーシャルフィルタリングでパターンを抽出して、学習者の状況を高い精度で予測するテクノロジー、コンテキスト・テクノロジーが必要である。
  • コンテンツの動的生成
    コンテンツを開発者が頭付き合わせて開発をするという状況は、今後も続くと思われるが、それほどストーリー性が必要ないものについては、文脈に応じてコンテンツを動的に生成・提示することができる。またWeb 2.0的にユーザが作ったコンテンツもある。生成したもの、ユーザが作成したもの、プロが作成したもの、過去のものこれら全てを必要に応じて学習者に提示していくテクノロジーが必要である。
  • デジタル・ポートフォリオ
    これから生まれてくる子どもたちが作成する情報は、デジタルデータが占める割合が大きくなる。写真、ビデオ、学習記録などである。人間に関するあらゆる情報がデジタル化されると、大量・長期間の学習履歴情報が存在する。これはかつて無かった事態である。このような情報を活用すべきである。

5.3.BEAT “2.0” へ向けて

以上のような状況をふまえて、BEATでは「学習者の状況に動的に応答する学習環境」を提案していきたいと考える。
学習をしていく上で、わからないとき、迷ったとき、夢を持ったときに、状況に応じた適切なナビゲーション、ひとりひとりにフィットした動的コンテンツの提供、学びの歴史と学習コミュニティへの接続を実現したい。
そこで、動的に応答する学習環境を提供するには3層のレイヤーが必要である。

  1. インタフェース 「モバイル・ユビキタス技術」
    「いま・ここ」で必要な文脈情報を取り出す
  2. エンジン 「データマイニング技術」
    インタラクションから得られた情報と、大人数・長期間の学習履歴情報から、応答方針を決定
  3. コンテンツ 「メタデータ・モジュール化」
    エンジンに求められ得た応答方針に基づき、適切なコンテンツの動的生成・コミュニティへの接続

5.4.情報学環・福武ホール

2008年2月にBEATは、ベネッセの福武会長からご寄附をいただいて建設中の福武ホールに拠点を移動する。中には「福武ラーニングラボ」、「福武ラーニングスタジオ」、「福武ラーニングシアター」が設置され、ラボでは研究活動を、スタジオではワークショップを、シアターではBEAT Seminarを行うことになる。

 

5.5.最後に

最後にBEATが所定の成果を上げて、次期3年間につなげることができたのは、ここにいらっしゃる皆様のおかげです。今後3年間もがんばっていきたいのでどうぞよろしくお願い申し上げます。どうもありがとうございました。

今回は2006年度の成果報告とともに、BEAT第1期最後のセミナーとなりました。今回の報告にあったプロジェクトは、いずれもBEAT第2期のビジョンの実現を予感させるもので、今後3年間への期待が高まりました。BEATセミナーは今後、3ヶ月に1回になりますが、より密度の高いものになると思います。どうぞ今後ともご期待ください。

BEAT Seminar Report

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