12月11日第5回公開研究会が東京大学本郷キャンパスで開催されました。今回も多数の参加申し込みをいただきましたが、ワークショップ形式で実施のため、30名に参加者を限定しての実施となりました。
テーマは、「モバイルする!?科学教育」。新しい科学教育は、モバイル技術の活用でどのようにデザインできるのでしょうか。前半では、「レクチャー」として、コンピュータやモバイル技術を用いた科学教育の歴史と現在についての紹介がなされました。さらに後半では、前半のレクチャーを踏まえ、「モバイル技術を使ってどのような科学教育/コンテンツを実現することができるのか」を参加者全員で考えるワークショップが開催され、斬新でプレイフルなアイデアがいくつも披露されました。
※毎日教育メール(メールマガジン)2004-12-15 No.722号でも紹介いただきました。
毎日教育メールの申し込みはこちら
■プロローグ
セミナー冒頭では、BEATで「科学の学びを支援する携帯メディア教材の開発プロジェクト(Project Fish)」を率いる、独立行政法人メディア教育開発センター/東京大学大学院情報学環客員助手の中原淳氏よりセミナーの趣旨説明とプロジェクトの紹介、プロジェクトを推進するメンバーの紹介が行われました。
●セミナーの「究極の目的」
中原氏は「モバイルや科学教育の今までを知ること、未来を想像すること、人と繋がることを通じてモバイルを活用した教育をデザインできるようになることのささやかなお手伝いをすること」を挙げました。
●Project Fish とは
BEATの3つのプロジェクトのひとつ。Fish = Fostering Inquiry-based Science with Handheld devicesである。科学教育をターゲットとし、携帯メディアの利用をその中に位置づけた総合的な教材パッケージを作成します。
メンバー
- 中原淳(独・メディア教育開発センター助手/BEAT)
…プロジェクトマネジメント・システム開発担当
http://www.nakahara-lab.net/ - 西森年寿(独・メディア教育開発センター助手)
…システム開発担当 - 山口悦司(宮崎大学教育文化学部助教授)
…カリキュラム開発担当
http://www.miyazaki-u.ac.jp/ ̄www-edu/j/professor/007/F007-078.html - 望月俊男(神戸大学学術情報基盤センター助手)
…評価担当
■レクチャー
これまで様々なコンピュータの利用が成されてきた科学教育。その活用の歴史はどのようなものであったのか。また、これから教育への活用が期待されるモバイルデバイスではどのような科学教育が可能になるのか。様々な実践事例が紹介されました。
【1. モバイル前夜:コンピュータと科学教育1】
独立行政法人メディア教育開発センター助手の西森年寿氏より、教育分野におけるコンピュータの利用の歴史と事例をご紹介頂きました。
古くはティーチングマシンに遡るコンピュータの教育利用。1980年代からは、PCの性能の向上に伴い、PCは単なる教師の代替としてだけではなく様々な活用の可能性が模索されました。
現在のPC活用類型の代表的なものとして、
- 地震の発生の様子をコンピュータ上で再現するシミュレーションへの利用
- 『科学技術・理科教育のためのデジタル教材提供システム 理科ねっとわーく』 などのマルチメディアコンテンツ提示としての活用
- e-learningや遠隔交流学習での電子掲示板などコミュニケーション分野での応用
- センサーと接続し、測定データ収集・分析ツールとしての利用
などの事例が紹介されました。
【2. モバイル前夜:コンピュータと科学教育2】
宮崎大学教育文化学部助教授の山口悦司氏からは、教育カリキュラムの中でのコンピュータ活用事例としてWISEプロジェクトやJasperプロジェクトをご紹介頂きました。
山口氏は、ICTを利用した教材開発者はコンピュータには利用することそれ自体が学習の効果を高め得ると考えがちだが、コンピュータはあくまで「道具」であり、使い方次第で限界も生まれると指摘。更に、コンピュータの利用を「使い方」に埋め込むことで、その目標とする効果を現実化することができるのではないか、と述べました。
最後に、コンピュータの教育利用のトレンドは学習内容込みの使い方である「コンピュータ+カリキュラム」であると指摘、モバイルにもこの方針が適用できると締めくくりました。
■成功事例の紹介1 Jasper プロジェクト
「ジャスパー・ウッドベリーの問題解決シリーズ」、通称「ジャスパー・プロジェクト」は、米国のバンダービルト大学によって1990年代前半に開発されたマルチメディア教材である。全12巻のビデオ教材で、生徒とビデオの登場人物との相互作用が可能であり、主人公ジャスパーの冒険物語の中には、生徒が数学の重要な概念を理解したり、それを応用しなければならない様々な課題が組み込まれている。なお、このシリーズに取り組んだ生徒は、数学の問題解決やコミュニケーション能力および数学の学習態度が向上したという報告が多く成されている。
■成功事例の紹介2 WISEプロジェクト
Web-based Inquiry Science Environmentの略。科学の内容が本当は日常で役に立つ、「使える」知識であることを理解させる授業を支援する。カリフォルニア大学バークレー校のLinn,M.が研究代表を務めた。主に二つの方向性を持っている。
- 生徒が日常生活で見たり聞いたり身体で感じたりしていることとその科学的な意味とをしっかり結びつけ、自分で使えるまとめを作らせる。
- 生徒同士の議論や専門家の意見に触れることから、学ぶべきことを更に見つけ、考えを深める。
※参考文献
- 米国学術研究推進会議(編著)森敏昭 秋田喜代美(監訳)(2002)「授業を変える−認知心理学のさらなる挑戦」北大路書房
- 三宅なほみ・白水始(2003)「学習科学とテクノロジ」財団法人放送大学教育振興会
【3. モバイルと科学教育】
神戸大学学術情報基盤センター助手の望月俊男氏からは科学教育でのモバイル利用事例についてご紹介頂きました。
特にミシガン大学のHi-CEプロジェクトやMITのParticipatory Simulationsの事例が紹介されました。後者に関しては、実際にProject FishのメンバーがParticipatory Simulationsで用いられるソフトウェアを利用している映像を見ながら、教材の使い方や目的についての解説や考察がなされました。
■ワークショップ
後半では、Project Fishのメンバーも参加者に混じり、9グループに分かれて「クリエイティヴ=コモンズ・ワークショップ」を開催しました。
「モバイルを使ってこんな科学の授業、ワークショップ、コンテンツができたらいいなぁ」をグループごとに考え、イメージを画用紙の上に描き出しました。その後、ギャラリーウォークと題した発表会を行いました。
地球規模のスケールに広げたParticipatory Simulationsの提案や、軍手にセンサーを組み込んで五感を拡張し、またそのままその軍手ひとつでプレゼンテーションができてしまうツールなどが披露されました。数々のユニークなアイデアに会場は大いに盛り上がり、モバイルを活用したステキな学びの未来に期待が高まりました。
来年、2004年1月8日(土)開催予定のbeat seminarは、NTTドコモ モバイル社会研究所との共同企画となります。
皆様のご参加をお待ちしております。
beat seminarについてはメールマガジン第7号で詳細をお知らせ致します。
モバイルする!? 科学教育
14:00〜17:00
大学院 情報学環 暫定建物 2階教室
- 14:00-14:15
プロローグ(中原)- 趣旨説明
- メンバー紹介
- プロジェクト紹介
- 14:15-14:35
モバイル前夜:コンピュータと科学教育1(西森氏)- シミュレータとしてのコンピュータ
- データ収集としての
- マルチメディアコンテンツ
- 質疑応答(10分)
- 14:45-15:05
モバイル前夜:コンピュータと科学教育2(山口氏)- カリフォルニアバークリー校のWISEなど、
カリキュラムに位置づけられたコンピュータの役割。 - 協調学習について。
- 質疑応答(10分)
- カリフォルニアバークリー校のWISEなど、
- 15:20-15:50
モバイルと科学教育(望月氏)- なぜ今モバイルなのか?
- HI-CE、Code it!など
- Participatory Simulationの実際
- 今使えそうなモバイル技術
- 質疑応答(10分)
- 16:00-16:15
休憩
16:15-16:45
-
- 「想像してごらん」
- 「もしあなたなら、今のモバイル技術を使って、どのような科学教育/コンテンツをつくりますか?」
- 発表(15分)
- (17:00-17:15)
- 18:00〜
懇談会
BEAT Seminar Report
2009年度のBEAT Seminar Report
- 第3回:モバイルARが拓くPlace Based Learningの世界
2009年12月5日 - 第2回:日本の教育×オープンイノベーション:世界に貢献できる人財づくりと教育富国を目指して
2009年9月5日 - 第1回:2015年の学習環境を考える
2009年6月6日
2008年度のBEAT Seminar Report
- 第4回:BEAT 特別セミナー
教育工学25年の歴史から考えるデジタル教材の未来
2009年3月28日 - 第3回:アートワークショップで子どもの可能性をひらく
2008年12月6日 - 第2回:プロジェクト学習が大学を変える
2008年9月6日 - 第1回:あなたに「ぴったり」な学びをかなえる技術ー教育における協調フィルタリングの可能性を考えるー
2008年6月7日
2007年度のBEAT Seminar Report
- 第4回:BEAT 特別セミナー
未来の教育のために学校と家庭ができることーフィンランドと日本の対話ー
2008年3月29日 - 第3回:子どもの放課後学習環境
2007年12月1日 - 第2回:BEAT 特別セミナー
オープンエデュケーションが切り開く未来—Education 2.0:OCWの次にくるもの—
2007年8月25日 - 第1回:知育玩具ー創造的制作活動をアフォードする人工物
2007年6月2日
2006年度のBEAT Seminar Report
- 第9回:BEAT 特別セミナー
モバイル・ユビキタス技術と学習環境
:BEAT3年間の研究を総括する
2007年3月27日 - 第8回:子どもとネットコミュニティ
2007年1月13日 - 第7回:健康とICT
〜Web2.0で健康に?!〜
2006年12月9日 - 第6回:BEAT 特別セミナー
学習科学とICTは学びのあり方を変えるか
ー高等教育の変革を事例としてー
2006年11月11日 - 第5回:イマドキ・キッズの遊び場、学び場
どのようなチルドレンズミュージアムを創るか?
2006年10月7日 - 第4回:学校の枠を超えた交流学習:
伝え合うことで"異文化"を学ぶ子どもたち
2006年9月2日 - 第3回:ゲーム・ルネッサンス:いつか来た道、これからの道
2006年8月5日 - 第2回:Web2.0で創る『みんながちょっとずつ頭がよくなる世界
2006年6月24日 - 第1回:『かわいい子にはケータイを持たせよ?!』
キャリア各社の子ども向けケータイサービスへの取り組み
2006年5月20日
2005年度のBEAT Seminar Report
- 第12回:BEAT 特別セミナー
2005年度 研究成果報告会
2006年3月25日 - 第11回:「新しい評価技術とデジタル教材での活用」
2006年2月11日 - 第10回:「使える英語を身につけたい!:語学学習を支援するデジタル教材のこれから」
2006年1月7日開催 - 第9回:「Aクラス人材を育成せよ:企業eラーニングの現在」
2005年12月3日開催 - 第8回:「CAI/WBT」
2005年11月12日開催 - 第7回:BEAT 特別セミナー
「ヨーロッパ・モバイル放送の現状と教育利用の展望」
2005年10月 1日開催 - 第6回:BEAT 特別セミナー
「教育における知的所有権・その現在と未来」
2005年 9月 3日開催 - 第5回:デジタル教材の系譜・学びを支えるテクノロジー
シミュレーション
2005年 8月 6日開催 - 第4回:デジタル教材の系譜・学びを支えるテクノロジー
魅せます、CSCLのすべて:1日でわかる協調学習
2005年 7月 9日開催 - 第3回:デジタル教材の系譜・学びを支えるテクノロジー
インタラクティブ学習環境「Logo」
2005年 6月 11日開催 - 第2回:デジタル教材の系譜・学びを支えるテクノロジー
「人と森林」「マルチメディア人体」
2005年 5月 7日開催 - 第1回:デジタル教材の系譜・学びを支えるテクノロジー
ミミ号の航海と合衆国マルチメディア教材の系譜
2005年 4月 2日開催
2004年度のBEAT Seminar Report
- 第8回:BEAT 特別セミナー
Emerging learning technology in education
姿をあらわしはじめた 新しい学習テクノロジー
世界最先端の現場から
2005年 3月 5日開催 - 第7回:BEAT 特別セミナー
プロジェクト成果報告会
2005年 2月 5日開催 - 第6回:DoCoMoモバイル社会研究所 共同企画
ケータイ・ネット・テレビ
〜メディアとこどもの今とこれから〜
2005年 1月 8日開催 - 第5回:「モバイルする!? 科学教育」
2004年12月11日開催 - 第4回:「モバイルコンテンツとインストラクショナルデザイン」
2004年11月 7日開催 - 第3回:「ヨーロッパ・m-learningの現在」
2004年10月 9日開催 - 第2回:「"ケータイ"と教育の未来」
2004年 9月 4日開催 - 第1回:「地上デジタル放送の教育展開」
2004年 7月 3日開催

